これまでに幻冬舎ルネッサンスにご応募いただいた作品の中から、優秀作品を選出し紹介する期間限定の特設ページです。編集部が厳選したイチオシ作品を無料で全文読むことができます。熱意と才能、そして可能性に満ちた作品をどうぞご覧ください。
あらすじ
交友関係の広い「女房」が海外旅行に出かけ、自宅に一人残されたしがない画家の「俺」。
空腹になれば食事をし、眠くなれば寝るという自由気ままな留守番を楽しんでいた。
そんなある朝、ゴミだしのために家を出ると、玄関を出たところに十円玉が4枚、きちょうめんに積み重ねられているのを発見する。
子どものいたずらか?忘れ物か?
――つかの間、気には留めたものの、たった40円のこと。
舞い込んだ仕事を片付けているうちに、そんなことも忘れてしまっていた。
しかし仕事が一段落すると、不思議と40円のことが気にかかって仕方ない。
「俺」は40円の“謎”を解明すべく、その4枚を手に取ってみたり、計算してみたり、大昔の思い出を引っ張り出してきたり、画用紙に図を描いて哲学的な思考を深めたりと、滑稽なまでにあれこれ考えをめぐらせるが、そんな彼をあざ笑うかのように、謎は深まるばかりだった。
「女房」と「俺」、それぞれのキャラクターがしっかりと描かれており、また二人の会話もリアルで絶妙。気ままに暮らし、40円のことが頭から離れない「俺」と、仕事をバリバリこなし、活発に旅する「女房」。大きな仕事を終え、三週間かけて巡礼の旅に出た「女房」に比べ、たった40円のことでこんなにも思い悩む「俺」の姿がなんとも言えずもの哀しいが、読者はいつしか「俺」の共犯者になっていく。たった4枚の硬貨をめぐる小さな小さな世界を描いた作品だが、二つの出来事によってその世界を一変させる手腕が見事。さらに、二人のキャラクターの違いが色濃く描かれ、クスリと笑わせるラストも秀逸である。
あらすじ
「化けてご主人の心の中に住み着いているのです」
当たり前のように感じて、いつしか忘れてしまっていた「淋しい」という感覚。
起業家の父と芸妓の母の非嫡出子として生まれた“僕”は、寝室で出会った真っ白い犬のぬいぐるみ“コロちゃん”にその存在を知らされる。
特別な出自による疎外感、癌を患った父のあっけない死、母の帰路を待ちながらひとりぼっちの就寝……。それらを受け入れてきた僕の心には、いつしか“淋しさ鬼”が住み着いてしまって――。
コロちゃんに導かれて鬼退治に出た僕は、自分の心の淋しさを乗り越え、母親の心も守りたいと思えるほどに成長する。
幼い子どもが自我に目覚めていく姿を丁寧に書いた、温かくやさしい物語。
「淋しさ」という人間の普遍的なテーマを、子どもの視点で書いたユニークな作品。冒頭の出自や大人たちの言い争い、すすり泣く母の姿など、所々で妙に冷たく現実的な展開が待っている。そんなギャップも面白く引き込まれた。大人から見ても辛い状況のなか、素直に淋しさを受け止め、乗り越えようとする僕の姿がとてもいじらしい。ひとりの主人公として見守っていた僕が、次第に読者自身の幼少期と重なっていき、不思議と温かい読後感に包まれる。「読めば分かる」とはまさにこの作品を指すのではないだろうか。ぜひ何度も読み返して、さみしさ鬼の魅力に浸ってほしい。
あらすじ
日本を飛び出て海外へと渡ったベリーダンサーの英子。
英子は北米を放浪した末に、初めてショーダンサーとして踊った女性……
今はカナダのとあるギリシャレストランでコーヒー占いをする、占い師の老婆に出会う。
占い師のコーヒー占いの結果、英子は「カメリア」(椿)という名を授けられる。それは、英子の過去にかかわる大きな意味をもつ言葉であった。
そしてコーヒーカップの底には、彼女の未来と幼い日の景色が確かにしめされていた――。
占い師との出会いからはじまる、ベリーダンスにまつわる英子の数奇な人生の物語。
続きを読む導入部分の主人公 英子と謎めいた占い師、ふたりの出会いのシーンが印象的で引き
こまれる。
英子がなぜ日本を離れざるをえなかったのか、ベリーダンサーになるに至った背景が語られる中で、読者はベリーダンスの源流である「ラクスシャルキー」と呼ばれる舞踊の歴史や、その発祥地であるエジプトの文化、芸能としての舞踊に留まらない社会学的なベリーダンスの奥深さに触れることになる。
その後、ロンドンやカイロ、パリなどさまざまな国を渡り歩きながら英子が歩む波乱万丈の人生とラブロマンス。冒頭のシーンになぞらえた物語の締めくくりも絶妙である。
この度は本コンテストにご参加いただき、ありがとうございました。
丹精込めて書き上げた力作、粗削りながらも今後が楽しみな期待作、このまま書籍化したい優秀作まで、 多種多様な作品と出会うことができました。
たくさんのご応募をいただけました事、深く御礼申し上げます。
次回開催の折には、よりいっそうお楽しみいただける企画・運営を目指してまいります。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
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