大賞作品電子書籍化、単行本発売
大賞
『金の顔』
菊野啓:著
【大賞作品 幻冬舎ルネッサンスより電子書籍化、単行本発売】
- ジャンル
- 小説
- シリーズ
- 新刊
- 著者
- 菊野 啓・著
- ISBN
- 9784344927865
- 判型
- 4-6・235ページ
- 出版年月日
- 2020/4/28
- 価格
- 1,200円+税
■あらすじ
舞台は昭和40年代の農村。貧乏農家で育った「私」は、様々な体験によって人生観を形成していく。身近な動物の死。金を嫌悪する祖父の言葉。女生徒アユミとの交友……。
夏休みのある日、壮絶な夫婦喧嘩をきっかけとして、「私」は母に手を引かれて親戚の家へ転がり込んだ。老舗旅館を経営する叔母一家の裕福な生活を目の当たりにして、「私」は医者になることを宣言する――。死、金、性。人間の営みを真正面から描いた純文学作品。
大賞作品『金の顔』
編集者講評
貧しい家庭で育った「私」を主人公とした一人称小説だ。敬体を使いこなした地の文の語り口が著者の表現力の高さを窺わせる。情景描写、会話文ともに質が高く、人間の生活を舐めるように描いている。子どもながらに金に執着する「私」。
また、そうした環境において当然のことのように起こる暴力や万引き。両親が交わる現場を見た「私」の心傷は壮絶なものだったろう。大人になってから認知症の母を大切に思い介護する結末には、単純な家族愛の物語としては括れない複雑な余韻を残す。
作中の経過時間については、細かな整理を行なうと、なおよいだろう。
後半では大人となった「私」が登場するが、空白の期間が大きく、唐突に感じる読者もいるかもしれない。
ただ、応募作品の中で抜きん出た完成度を誇っていることは確かだ。町田康『きれぎれ』や吉村萬壱『ハリガネムシ』の系譜に並べても不自然ではないだろう。