分かれ道 西出和代:著 作品講評 タイトルから窺えるように、これまでの人生を振り返った際に見えてきた分岐点や現在も印象に残っているエピソードをたった17文字の中で表現しきった俳句たちでした。 特に、「加留多とり 泣く児のごとき 不運あり」では、お正月に家族が集まり加留多を取り合うなかで、手がぶつかり合った際に怪我をするなど思わぬハプニングによって泣いてしまう子どもの情景が立ち上ってきます。 同時に、思いがけないところで不運に見舞われたご経験について想起する著者の心情を滲ませ、一気に過去の回想へと読者を導いています。不運というインパクトが強くなりやすい言葉を使用しているものの、「加留多」の存在がほんのりとした微笑ましさを残す1作でした。 また、「好きの意味 辞書で引いた日 桜餅」には読み手によって異なる意味に捉えられる部分もあり、著者の描写力の高さを克明に表現した1句であるといえます。進学してすぐに迎えた思春期の微妙な感情を描き出したともとれますが、出会いと別れの季節である春に経験したパートナーとのエピソードについて描いているとも感じられます。 繊細な感情を描き切る筆力の高さと鋭い観察眼があるからこそ生まれた、読者を一瞬で別世界へと誘う作品たちでした。
作品講評
タイトルから窺えるように、これまでの人生を振り返った際に見えてきた分岐点や現在も印象に残っているエピソードをたった17文字の中で表現しきった俳句たちでした。
特に、「加留多とり 泣く児のごとき 不運あり」では、お正月に家族が集まり加留多を取り合うなかで、手がぶつかり合った際に怪我をするなど思わぬハプニングによって泣いてしまう子どもの情景が立ち上ってきます。
同時に、思いがけないところで不運に見舞われたご経験について想起する著者の心情を滲ませ、一気に過去の回想へと読者を導いています。不運というインパクトが強くなりやすい言葉を使用しているものの、「加留多」の存在がほんのりとした微笑ましさを残す1作でした。
また、「好きの意味 辞書で引いた日 桜餅」には読み手によって異なる意味に捉えられる部分もあり、著者の描写力の高さを克明に表現した1句であるといえます。進学してすぐに迎えた思春期の微妙な感情を描き出したともとれますが、出会いと別れの季節である春に経験したパートナーとのエピソードについて描いているとも感じられます。
繊細な感情を描き切る筆力の高さと鋭い観察眼があるからこそ生まれた、読者を一瞬で別世界へと誘う作品たちでした。