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第三話「ひとり」 〜 泥沼の底から光の射す大空へ(その3)

さくら

三重県出身、1976年生まれ。
子供の頃から本が好きで、小説、漫画、アニメなどあらゆるジャンルの作品を見ます。

第三話「ひとり」 〜 泥沼の底から光の射す大空へ(その3)

 私は学校へは行っていましたが、誰とも関わらず、いつもひとりでした。何も頭に入らず授業は右から左へ抜けて行きました。その変わりに私が毎日考えていた事があります。どうやって死ぬかです。まだ小学校を卒業して数か月の私には、あまりにもつらすぎる経験でした。あの男はどうして私の家に来たのか。そうです。母が連れて来たんです。母はこうなる事を知っていて、わざと男を連れてきて私と2人にしたのでしょうか。私には心当たりがありました。母は父と別れてから家の事を全くしなくなり、私が掃除や洗濯をしました。いつも母は男と遊びに行く事ばかり考えていたので、そんな母が大嫌いになっていました。母のする事なす事が全部嫌でいつも母と私はけんかしていました。

私は思ったのです。母は私の事が口うるさい嫌な子供であり、男に差し出しておけば自分は遊びに連れて行ってもらえると思ったのではないだろうか。わざと私を男と2人にしたんだろうと。

そう思うともう何もかもどうでも良くなって、どうしたら死ねるんだろうかとよく考えました。よくテレビでやっている学校の屋上に靴をそろえて飛び下りることなどできるだろうか。

しょうゆを一気に飲み干せば死ねるらしい、バファリンを一箱全部飲んで寝たら死ねるとか、念には念をで2箱飲むか、とか、色々考えたけど、決行はできませんでした。

 ただ、一人で死ぬのもくやしい、あの男にも何かしてやらないと気が済まない。どうしてやろう、住所をつき止めて手紙を出すか、この男は子供を強姦しましたって。それよりもいっそ殺してしまおうかその後で、遺書でも書いて死にましょうか。

 母はだいちを連れて男と出掛けて行きます。私はあれ以来男の事をくずと呼んで一緒には行きませんでした。ついて行かない事はできるけど連れて来るのは止めてもムダでした。母はまたしても男を残して先に仕事に行くと言って出て行きました。この時はだいちもいたので男も帰るだろうと思っていたら、少し酔っている様子で何度も私の体を触ってきます。

 私はだいちをおばあちゃんの所へ行かせました。このままではだいちがいてもおそってくるかもと思ったからです。そして、男を殺す事を考えていました。今度襲ってきたら、どうにかにて男を殺してやろうと考えていたのです。

 でも結局、殺すどころかまたしても男に強姦されてしまいました。あろう事か男は満足したかのようにおこづかいをあげると二、三千円を私に渡したのです。

 男が帰ると怒りがこみ上げてきました。私を何だと思っているんだと。

 前にも増して死ぬ事と殺してやりたい気持ちが大きくなり、起きている間、ずっとそんな事ばかり考えいました。もし妊娠していたらどうしようなどとそんな事まで考えました。

男の殺し方まで色々考えました。

父に頼めば殺してくれるだろうかとか、酒に毒を入れようか、男の会社に慰謝料を請求してやろうかなどと、もう中学一年生の考えるべき事ではない様な事を毎日毎日朝から寝るまでずっと考えていると私の性格もおかしくなっていきました。

学校でも、つばきちゃんが他の友達と仲良くしているのを見て泣き出していたりしました。

母は相変わらず自分が楽しければ良かった。

母は私とだいちに祭りに行くよと言いました。

私は行きたくなかったけど、まだ小さいだいちがかわいかったので、だいちは行きたいんだなと一緒に行く事にしました。

ご飯を食べるからお店に行くとあの男も来ました。

まあ今日は母も一緒だし、今度は帰ったらすぐにおばあちゃんの所へ行けばいいと考えていたので少し油断していたのですが、母は「仕事に行くから帰りは送ってもらいなさい。」と言って行ってしまいました。

母がいなくなると男はだいちの手をおもいきり引っぱりました。

だいちが痛がるので私は「やめて。」と言うと、男はとても不機嫌そうでしたが携帯電話もない時だったので男に送ってもらわないと家に帰れないから仕方なく後をついて歩きました。

 男は車に乗ると酔っているせいかごきげんでした。

あるアーティストの曲を大音量でかけてオメオメコと呼んで歌っているのです。

何度も何度もくり返し大声で呼ぶのでだいちも怖がっていましたが怒らせてはいけないと私はだいちを抱きしめて怖いのをこらえておとなしくしていました。家に着くと車から飛び降り母屋に飛び込んだ。

素早くかぎを閉め決して出ていかなかった。

おばあちゃんに男が酔っぱらっているからと言って、だいちを寝かせてもらった。

だいちが怖がっていたのでおばあちゃんも大変だと思った様子で、男が戸をドンドンたたいて私に出て来いと呼んでいたが取りつがなかった。

しばらくして男は帰ったが、とっても恐ろしく長い恐怖の夜だった。

 あまりの恐怖体験だったので、それ以来母に言われても色々と言いわけを考えて男が一緒の時には絶対に付いて行かなかった。

普通の親なら酔っぱらった男の車で大事な子供達を家まで送らせたりはしないはずです。

 しばらくするとあの男は家に来なくなったのだが庭に干してあるパンツの一部が切り取られるという事が何度かあった。

私はあの男の仕業ではないかと疑ったが結局の所は分からずじまいだった。

 あの男も来なくなり、私は安心できるようになったが、やはり男を許せない、殺してやりたい、死んでしまいたいという思いは頭の中から消えなかった。

 勉強を全くしていなかったせいもあり成績は最悪の状態だったので、前向きになる気力も出てこなかったのです。

 少しでも一人になってぼんやりする時間があると、私はあの日男に襲われた事を思い出してしまいます。忘れようとしても決して忘れる事などできないのです。

私の家族は皆ある宗教に入っていました。

中学生の私には担当の女子部のお姉さんがいて色々と宗教活動に参加する時に一緒に連れて行ってくれたりしました。

ある日いつものように担当のお姉さんが宗教団体の先生のお話しがあるから聞きに行こうと誘ってくれたので、私も行く事にしました。

この頃頻繁に先生のお話を中継していて、皆で集まって見るという事があったので私もよく参加していました。

この日の話が、この時の私にとってとても重要なものとなりました。

当時の日本では自殺者が多かった様で、先生も自殺について色々と話していて、自殺がいかに良くない事であるかを、学校の先生や親から聞く事よりもはるかに私の心にすんなりと入って来ました。

そして男を殺してしまったら、すみれとだいちは大変な思いをする事になるんだろうと考える事もできるようになりました。

男を殺しても、私には何のメリットも無いんだ、すみれもだいちも人殺しの妹、弟だと言われ、学校にも行けなくなるだろう。

それに私は刑務所に入らなくてはなりません。

 父に殺してもらっても、父が刑務所に入れられてしまい、私達も人殺しの子供という事になってしまい皆が不幸になります。

そんな風に考えていると何だかあの男の為に自分達がそんな目にあうのもばかばかしいと思えてきました。

もう殺すだの死ぬだのは考えずに前向きに生きて行こうと、勉強もしなくてはと思える様になってきました。

 少し生きて行く事に前向きになれる様になった頃、母はまた知らない男を連れてきました。

私はまた恐くなりました。

見た目は前の男よりも良くない嫌な感じの男です。

 私は警戒していました。母が出掛けると言っても決して付いてはいかない、男と決して2人にはならない、いつも周りに注意し落ち付く事が出来なかった。

 母は急にディズニーランドに行くと言い出し、わざわざ親戚のおばさんも連れて来ました。

すみれも連れて行ってあげればいいのにいつも母はすみれは連れてはいきません。

「さくらとだいちも行くからね」と言って準備をさせました。

私は行きたくなかったけど、だいちはディズニーランドに行けると、とても嬉しそうでした。

私も本当はディズニーランドに行ってみたかった。

だけど、知らない男がいる事がとても不安で怖かった。

男が車でやって来ると、男の母親がやって来ました。

「何でこんな人達と行って私は一緒に連れて行ってくれないの?」と言ってすごくもめていたので私はだいちと家にかくれていました。しばらくすると男の母親はあきらめたのか帰って行きました。私は行きたくないのと、ちょっと行きたいのと混じった複雑な気持ちで男の車に乗り込み出発しました。

 途中で一泊する事になり民宿の様な所に泊まりました。

私は夜中に目が覚めて、それはもうびっくりしました。目の前に男がいて私にキスをしていました。何事だと見て見ると男はブリーフのパンツをどうしてだかうら返しにはいていてパンツ一丁の姿でした。

私が目を覚ましたので「ねえ、お風呂に行こうよ。」と何度も呼んできます。

男にキスされたのがものすごく気持ち悪くてツバを飲み込む事ができません。

ペッと吐き捨てたいのですが、皆が起きるまではふとんから出てはいけないと、もう必死にふとんにもぐり込みました。

その間男は、私をお風呂に連れて行こうと呼んでいました。

 すぐとなりのふとんで母もおばちゃんもだいちも、全く気が付かずに寝ていました。

 母はまた変な男を連れて来た。私をいけにえにして、そんなにディズニーランドに行きたいのだろうか。

 私は母が何を考えているのか分からなかった。

 ほとんど寝られずにディズニーランドに着き、夜中の事を思出すと私は全然楽しめなかった。母は全く何の計画も無しに行き当たりばったりで行った為、帰りもよく分からない所に泊まりましたが、今度は何も無く済んで良かった。

 もうすぐ家に着くのに私達の中学校のすぐ近くの公園の駐車場に入り男は車を停めました。中学校へ通う生徒達が次々に通り過ぎて行きます。男はちょっと疲れたから休憩すると言いました。

 私は学校を休んでディズニーランドに行っていたので、他の子達には絶対に会いたくありませんでしたので、下を向いて動かずにかくれていました。これは本当に男の嫌がらせだと思いました。

 その時の写真がありますが、私の顔はとても楽しんでる子供の顔ではありません。

 今では普通に見れますが、とても嫌な思い出の写真です。

 中学校生活で私は友達が一人もいませんでした。小学校の子達とも関わるのが怖くて、少しずつ関わりを持つようになってきました。一時は友達は本と山だけ、一人でいる方が楽しいなんて思っていた事もあったけど、少しずつ人と関わる様になってきました。

 私はテレビで舞子さんの特集を見ました。家を出て京都で舞子さんになりたいな、母の元から離れたいなと密かに思っていました。

 しかし、私がいなくなったらだいちとすみれはどうなるんだろう。

お金も無いし母はほとんど家にいない。

今度はすみれがひどい目に合うんじゃないかあきらめるしかありませんでした。

 母はさくらに高校へは行った方がいいに決まっているから行きなさいと言うので行く事にしました。

勉強が全くだめで、私立高校へ行く事になりました。

母は「高校へ行くにはお金がかかるけどお金の世話をしてくれる人がいるからお金の心配はいらない」と言いました。だけど、その人にお世話になるんだから一度挨拶に行くからと連れて行かれる事になりました。

また新しい男かな、今度はお金がたくさん必要だから、本当に何をされるか分からないぞ。そんなのだったらやっぱり高校なんて行かなくてもいいからどうこかで働く方がいいよと思いながら、しぶしぶ母に連れられて男の家に行きました。

 私の思っていたのとは違った本当に優しいいい感じのちゃんとした大人の男という風な人で、この人なら大丈夫かなと思いました。

何度か家に行きましたが、私にとって足長おじさんでした。