日曜日はどこに行っても人間、人間、人間。たまに犬やら猫とかカラスとか。

　車で買い物に車で行ったあかつきには駐車場がまるで空いてなくって結局引き返す始末だ。

　舌打ちをしながら距離にして50メートルほど離れたドラックストアに車を停める。

　ドラックストアもスーパーよりは混んではいないけれど、駐車場は結構車は停まっているからあたしのようなずるがしこい人がいるんだろうなぁと同胞意識が芽生える。

　まあ本当はいけないのだけれど。バターとアボカドに卵だけを買うだけなのでとさっさと歩いてスーパーに向かう。

　すっかりと春の陽気。

生温い風があたしの顔をそっとなでてゆく。

やや日差しがきつくなってきたなと感じた。

しばらく目をつぶり春先の日差しと春めいた匂いを感じとても心地がよくなる。

 すれ違う人たちはほとんど家族連れないし若い男女。若くない男女。男と男。あるいは女と女。

　ひとりで買い物に来るなんて、あたしだけじゃあないの？くらいに感じてうつむきながらひとりぐちる。

　 日曜日は大嫌いだ。

　平日はへいたんに普通に仕事をして、適当すぎるご飯を食べて猫をなでて（５年飼っているけれどいまだに威嚇される）好きな入浴剤をいれバスタブに湯をはり、寝床に入ってから好きな小説の続きをドキドキしながら読む。

　そんな30歳独身彼氏なしの日課だ。

　彼のことはあまり考えなくてもいい。

ふとしたときに、電話をくれるし、あおうと思えばあえる。

あたしからは絶対に電話はできないので、都合のよいおんなだといわれてしまえばそれまでだ。

もうすっかり都合のいいおんなの烙印を押されている。

   それをまるで承知でつきあっているのだ。

つきあうという単語の部類に属さないあたしの場所。

好きなのに、好きになっても仕方ないし、あいたいのに、あたしがひどくあいたくてもあうことは許されない。

　あったらあったで、嬉しいけれど、嬉しさの反面、つらすぎるのもある。

今度はいつあえるのか。

今度はあるのだろうかという不安と悲観。

あたしは、器用ではない。料理もそうだけれど、何に対しても不器用なのだ。

  つよくとてもつよく固くなりたい。

切に思う。

 『気楽にさ、楽しければいいじゃん』

  彼はあたしが眉間にしわを寄せると必ずそういう。

  簡単ではない。

  難しい議題だとずっと考えているのに。

答えはまだ出ない。わかっているのは、このまま自分の気持ちに忠実でいるか、連絡を途絶えてしまうかの2択だ。

 好きだけでよかった。

まわりが見えなかった。

まわりを巻き込んで苦しんだ人があらわれた。

泣いて、困らせ、あたしは感情のまま、利己的な行動をした。

 つきあいが長くなるうちに、彼に見返りを求めるようになった。

だから、泣いた。

どうすることも出来ない、現実に。

おののき、泣いた。

泣いた朝は必ず目の上に蚊に刺されたよう腫らした。

だからその日は有給を使って会社を休んだ。

だから有給はもう残ってはいない。

  スーパーの入り口で、ハッと息をのんだ。

   小学生の男の子と多分中学生くらいだろう女の子。その背後に優しそうなお父さんと優そうなお母さんがニコニコしながらなかよしこよしでスーパーに吸い込まれていった。

   彼の家族とだぶって見えた。

   ちょうど、彼の子どもさんも同じような年齢だったから。

   彼も家族の前であのお父さんのように屈託なく笑顔を向けているのだろう。

   あたしはひどく孤独で彼は家族と笑いあっている。

  決してせめているわけではない。

あたしの醜い心がいけないのだ。

わかっているはずなのに。

家族4人の後ろ姿を眺めながらあたしは目を逸らす。

　そのままスーパーには入ったけれど、結局何も買わずにおもてに出た。

  あそうだチーズケーキでも焼こうかと思ったんだけれど、焼いても食べてくれる人もいないことに気づく。

『あほみたい』

　 誰にゆったわけではない。小さくつぶやいた声は春の平和な空に吸い込まれていく。

　小さな男の子が横に立っていて、あたしの顔をじっとのぞき込んでいた。何だい？　君？　

あたしはね、孤独じゃねーよ。

　そんなビー玉みたいな目であたしを見ないでよ。

   だって日曜日が嫌いなんだから。

   つよくもないのだし。

　それにチーズケーキを焼いたことなどないんだから。