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第十二話「人間失格」 〜 泥沼の底から光の射す大空へ(その12)

さくら

三重県出身、1976年生まれ。
子供の頃から本が好きで、小説、漫画、アニメなどあらゆるジャンルの作品を見ます。

第十二話「人間失格」 〜 泥沼の底から光の射す大空へ(その12)

 空に言われて私の行きたい場所を探し出しました。行きたい場所ってどこやろうと考えている時に、いい情報が入ってきました。

空のいる所から電車で行ける距離の場所に私と空の好きなアニメのコラボカフェがあるというのを知ったのです。

早速ケータイで色々と調べて空に言うとそこへ行こうという事になりました。

あと他にも人気のお店をチェックしておきました。

 私は仕事帰りに電車に乗って、空と駅で待ち合わせました。さすがに大きな駅です。色んな人が私の前を通って行きます。

近くにファッションの専門学校もあるせいか、都会のせいなのか、個性的な人が多いなあなどと周りを見ていました。

このまえのライブで買ったトートバッグを持っている人を見かけたりして、同じの持ってる人がいるぞと少し興奮したりして、空が来るのを待ちました。

 しばらくして空がやってきました。

空が向こうから歩いてくるのを見て、何だか他の人達と見比べてもすっかり都会に馴染んでいるなあと、空が少し都会の若者になった様に私は感じました。

それが良い事なのかどうかは分からないけど、空も一人で都会の雰囲気に混ざりながらやっているんだなあと思いました。

 空と私は調べてあったお店でご飯を食べて、駅の近くをぶらぶらしてから空の家に行きました。また遅くまで話して明日のコラボカフェを楽しみに寝ました。

 いよいよ初のコラボカフェです。

私も空も今まで一度もこんな所には来た事がありませんでした。

「すごいなあ」

自分達が知らなかっただけで、こんな楽しそうな所があったなんて。

本当に来れて良かったと私は心の中で思いました。

すぐには店に入れず、外のイスで順番を待ちました。

追加注文ができないと言われたので、メニューをすみずみまで見回しました。

そして二人でどれも高いなあ、どれもおいしそうだし、メニューによってはおまけの様な物が付いてくるものがあり、もう迷いに迷い、待ち時間もそんなに苦に思う事もありませんでした。

 席に案内されると、私の大好きなキャラの絵が間近で見れるすごく良い席に感激です。持って帰ってもいいというランチョンマットが置いてあったので、汚してしまう前にしまっておこうと丸めてかばんに入れました。

 空と二人でデザートと飲み物を注文しました。

また写真の様な物が運ばれてくると写真を取ってはお互いに少しずつ取って食べてみて、「おいしい」「きれい」とか言っていました。

でも空の注文したドリンクは本当にまずかった。

二人そろって「まずー」と言いました。

この値段でこのまずさはやばい、味が無いような何とも言えない味でした。

でも、他のスイーツがおいしかったので充分満足しました。

追加注文ができなかったので、まだ食べたい気分でしたが店内を見て回る事にしました。

 カベにはたくさんのパネルが掛けてあって席から見ていた絵の前で空に写真を取ってもらいました。

片っぱしから写真を撮って、じっくり見て回って、本当に楽しかった。

いい思い出になりました。

この日は他にも人気のお店でドリンクを買ったり、買い物したり、たくさん歩き回って満足でした。

次の日には帰らないといけないなんて考えたくないと思いましたが、夜は今日一日の事を空と話して、あのまずかったドリンクの事で盛り上がったり、アニメを見たりしてあっという間に寝ないといけない時間になりました。

 朝から私はあり合わせの材料でピラフっぽい物を作って空と二人で食べましたが、これがなかなかおいしくて、空も「おいしいおいしい」と食べてくれたので私もとても嬉しかったです。

二人でしばらくゆっくりしていたけど、そろそろ帰らなくてはと空とハグして帰る事にしました。空に近くの駅まで送ってもらって別れました。

 今度は迷う事なく電車に乗れましたが、なかなか遠いなあと改めて思いました。

でも、空に会いたいし、そんなしょっちゅうは行けないけど、また来たいと思いました。

 私は夫と別れて一年ほど過ぎてから、カップリングパーティーというものに行きました。何となく暇だし行ってみようかという軽いのりで二回参加しました。

最初はどんなものだろうと、少人数のものに一人で参加して、十歳ほど年上の男性と知り合いました。少し付き合ってみたのですが、どうも私の思っていた感じとは違って別れました。

しばらくするとまたもう一度会ってもらえませんかと言ってきたので、まあ暇だしいいかと会いました。

またしばらくは付き合っていたのですが、やはり合わないと思い別れる事になりました。

 次は会社の人が一緒に行くと言うので多人数のカップリングパーティに参加すると、今度は7才くらい年下の男性と知り会いました。この人はとても良く話す人で、私と話もよく合って楽しく話せて良かったです。

ですが、あきらかに私の体目当てだけである事に気付いたので、これはだめだと早目に別れる事にしました。

 私はやはり、本当に人を好きになるという事ができませんでした。

そしてこの年になり、今まで気にはなっていたけど、読む事のなかった本を改めて読んでみようと人間失格を読んでみました。

これはとても難しい内容の本でしたが、私は読むうちにのめり込んでいきました。

最後の娘さんの書いた文を読んで、なるほどそういう事なんだと理解できた部分もありました。

 それからしばらくして、映画版の人間失格を見て、改めて考えさせられました。

私は何の取り柄も無く空の母親として一応の親としてそれなりに生きています。

でも、一体今までの人生を振り返って見直してみても、何一つ立派な事もしてないし、空に胸をはって、私はあなたの立派な母親です、なんて絶対に言えないよなあと思います。

まさに太宰治が言った「人間失格」という言葉が思い出されます。

私はどうなんだろう?

高校へ行かせてくれた足長おじさんにお礼も言いに行ってません。私はこんな生き方しかしてこられなかったから人間失格なんじゃないだろうか、映画を見て私は自分の物語をちゃんと書かなくてはと思い、書き始めました。

これを書かなくては、こんなにも恥の多い生き方をしてきた自分を空は知らない、誰も知らないけど、誰かに聞いてほしかった、こんな生き方をしてきたけど、どうすれば良かったのか?何が正しかったのか?今からでも何かやり直せるのか少しやめていた自分の物語を、ちゃんと書かなくてはと思い、書き始めました。

 色々と思う所もあり、考えて寝られない日もありました。

毎日のように色々と夢を見てぐっすり寝られない。

はたして同じ様な経験をした人がいるかどうかは分からないけれど、同じ様に苦しんでいる人がいるのなら、ここにもいるよということを伝えたい。

さくらの苦しみを分かってくれる人がいるなら、これを読んでくれる人がいるなら、それだけでいい。

死んでしまいそうにつらくても、死ぬ事はないんだよ、私もこうして生きている。

楽しい事も、生きていれば、そのうちやってくるんだということを伝えたい。

現実が死ぬほどつらいなら、今いる現実から逃げ出して別の生き方をすればいいんです。

 さくらもたくさん逃げてきたのです。母親から、男から、夫から、たくさん逃げてきました。

そして今、まずまずの幸せと自由を楽しんでいます。

大好きな、大事な空がいるから、一人じゃないんだ。

現実から逃げ出して別の生き方をすればいいんです。

空がこれを読んで、私を軽蔑し、離れて行ってしまったとしたら、私にとってとても悲しい事ですが、私のしてきた事は事実です。

どうする事もできないのです。

 こんな物語書かなかったら、大好きな空にも誰にも知られずに済むのになんで書くのか?

ばかなのかも知れない。

でも今、なぜか、書かなくてはいけない、そんな気がして、本当は書く事なんて大嫌いなのに今、必死になって、せっせと書いています。

私は思います。

自分にあるはずの感情がどこかで無くなってしまったのか?

あるいは最初から無かったのか?

本当に男の人を愛するという事、愛されるという事に気付く事ができないのかも知れないと、それがこういう事になるのだろうか?今からでも気付く事ができるのだろうかと思ってはいるのです。

 そして何度も死のうと思って、今まで死なずに生きてきたけど、やっぱり死ななくて良かったと思います。

 私をいじめたりひどい目に合わせたやつらより、もっと自分が幸せになってやれば、それが何よりもいい事だと思えたからです。

 だって今、毎日そこそこ自由もあって、好きなマンガ読んでアニメ見て、空と話しもできるし、楽しいですよ。

会社ではおしゃべりしたり、ランチしたりできる仲間もできたし、本当の一人ぼっちじゃないんだなって思うからさみしくもない。

今になって、やっとそんな風に思える様になってきたんです。

 今までが本当に大変でした。もう海の底の奥の泥の中にうまってしまっている様な、真っ暗な日の光も当たらない様な所で、毎日泣いてばかりいたような、そんな日が、ものすごく長い間続いていたから、今こんな風に過ごせるのが、とても幸せで喜しいのです。

 今苦しんでいる人達にも、早く幸せな毎日がやってくる事を私は願っています。

何もしなくてはだめなんです。少し勇気を持って行動してみてほしいです。

必ず誰か助けてくれる人がいるのです。

 ここまで読んで頂いたみなさま、心より感謝いたします。ありがとうございました。

さくら