著者プロフィール                

       
混合介護 〜 『一隅を照らす』特別連載(その35)

市川 博昭

昭和7 年、静岡県生まれ。旧制静岡高等学校1 年修了後、新制東京大学文学部仏文科、法学部公法学科卒業。国家公務員六級職(法律)試験合格、農林省入省。退官後、協同組合飼料工業会常務理事、帝蚕倉庫取締役現業副本部長を経て、同代表取締役社長。(財)大日本蚕糸会監事を歴任、現在に至る。

混合介護 〜 『一隅を照らす』特別連載(その35)

 原則1~2割で利用できる介護保険サービスのほか、利用者が全額負担する保険外サービスを提供する混合介護は基準があいまいで、自己負担のサービスも介護保険サービスと誤認しかねず、混合介護を一切認めない自治体が多い。東京都豊島区は、国家戦力特区を活用して混合介護を全国で初めて実験する。介護業界で人手不足が深刻化する中で、事業者の収益機会を増やし、職員の賃上げと生産性向上につなげる実験である。豊島区は参加業者を公募し、企業とNPO法人を合わせ、10団体に決め、区の有識者会議でまとめた要件の下で、事業者を募った。計画では居宅内外の日常生活支援や安否確認、見守り、居宅内では掃除やペットの世話、電球の取り換え、同居家族分の調理、洗濯、ネット注文のサービスなどを援助する。居宅外サービスは、外出先の送迎、買い物、墓参り、散歩へ同行する。保険外の料金は業者によって異なるが、複数のサービスの組み合わせで、1時間当たり2000円から3000円台が多い。トラブルを防ぐため、業者に保険外サービスの提供計画の策定を求め、ケアーマネジャーの了承を求めるほか、契約の書面化など利用者保護規定を設ける。ただ、介護保険と保険外サービスの線引きが硬着的で、例えば、介護保険による利用者本人の食事の調理と保険外の家族分の食事の調理は、一度鍋を洗うなど、別々に分けなければならない。混合介護には、まだまだ多くの課題がある。

『一隅を照らす』特別連載 【全37回】 公開日
(その1)狸二度目の対面 2019年4月11日
(その2)初雪 2019年6月28日
(その3)ストレス 2019年7月5日
(その4)終戦の日 2019年8月26日
(その5)人生に寄り道なし 2019年9月6日
(その6)もやし 2019年10月4日
(その7)教養主義 2019年11月1日
(その8)黄色いマーク 2019年12月6日
(その9)冷蔵庫 2020年1月10日
(その10)根 気 2020年2月7日
(その11)小田急が学生寮開業 2020年3月6日
(その12)コンパクト・シティ 2020年4月3日
(その13)行政の電子化 2020年5月1日
(その14)地域密着型弁護士 2020年5月29日
(その15)座るとき、どうこいしょ 2020年6月30日
(その16)市民農園 2020年7月31日
(その17)ALS(筋萎縮側索硬化症) 2020年8月31日
(その18)卵 2020年9月30日
(その19)生きがい 2020年10月30日
(その20)からだ測定会 2020年11月30日
(その21)高齢者が高齢者を支える金融モデル 2020年12月28日
(その22)孤独 2021年1月29日
(その23)猫の日 2021年2月26日
(その24)首都圏の私大が都心へ回帰 2021年3月31日
(その25)さくら 2021年4月30日
(その26)箱根山 2021年5月28日
(その27)腎臓透析 2021年6月30日
(その28)おもてなし続編 2021年7月30日
(その29)筋肉 2021年8月31日
(その30)地域医療の行方 2021年9月30日
(その31)富士山 2021年10月29日
(その32)高齢の認知症老人は暴力的か 2021年11月30日
(その33)配膳のマナー 2021年12月28日
(その34)下垂体卒中 2022年1月28日
(その35)混合介護 2022年2月28日
(その36)LGBT(性的少数者) 2022年3月31日
(その37)梅雨明け 2022年4月28日