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嵯峨野 嘉竹 詩集 〜 詩集(その11)

嵯峨野 嘉竹

著者:嵯峨野 嘉竹
詩集3冊、私小説「私は猫なのね」などの自著がある。

嵯峨野 嘉竹 詩集 〜 詩集(その11)

疑問符の使命

疑問符で会話をする子供達を見て何を思いますか
自暴自棄に陥り荒んだ行為を繰り返す子供達を目にして
何を考えますか
不自然に歪んだ人生観を口にする子供達に接して
何を感じますか
自らの体に傷を付けてファッションだと言う子供達に
何を見ますか
不条理に表と裏を使い分ける子供達を考えるとき
何を求めますか

汚れた大人社会への悲鳴には聞こえませんか
何もしてくれない親への訴え掛けとは受け止められませんか
子供達は 泣いているのです
そんなことをする自分に
そして 何もしない大人たちに
必死に訴え掛けているのです
表現することが下手なのです子供には
何をすれば良いのか知っている大人が何もせず
何をすれば良いのか知らぬ子供が助けを求めているのです
あなたは今 何をすべきなのですか

命とは何……と聞かれたら
例える事のできない真理
造る事のできない青空と答える
そして
闇に希望を与えられる力
生きる事が尊い事だと伝えられる勇気だと言う
さらに
亡者にとっての灯台の明りだと悟りたい
何にも汚される事のない完璧の象徴であり
無垢な愛の象徴であると語り合いたい

抱っこ

君の頭を掌で包む
君の頬を 片方の手で撫でる
そして
悪戯に 君の耳をチョイチョイと触ってみる
その小さな顔を角度を変えてみる
そして
しっかりと抱きしめる

精進

社会に幻滅を感じ 生きる糧を失った時期
自暴自棄に陥ったとき
旅に出よと諭された
人は約しい旅人なんだ
雨に打たれ 風に吹かれて
ふらりふらりと流れて歩いた
道端の道祖神に叱られ
童歌を謳う子供たちに慰められ
古寺の仏に窘められた
生きるとは人のためでも社会のためでもなく
自分のために許された道なんだと教えられた
世の中が不遜だからといって
自分の人生が不遇になるというものではないのだと知った
悔いる事を恥とせず
改める事を遅きと考えず
精進を目標と心得るべしという事か

時間の駅

生きるという闇の中の駅に降り立ってしまった
目標は死ぬ事
目的は景色を眺める事
降ろされたことに意味はない
選ばれたかどうかなどは…どうでも良い事
降りなければ こんな恐ろしさは知らず
明日にうろたえる事もなかった
それでも何時かは 時間が止まる

白粉花

あっ うれしいな
白粉花が咲いたよ
ほら
遅咲きの紫陽花の影にかくれているけど
二つ三つと 赤く咲いているのが見えるでしょ
もう少したつとあの葉の上に 雨蛙がヒョッコリと乗っかるんだ
そうなると 空の上には入道雲が此見よ顔に威勢を張るんだ
雨上がりの空には 虹が何処までも伸びてゆくんだ
そのあとは時間と風がたちどまるんだ

ステイタス

君は大きな力で守られている
それは 自分でも心の片隅で受け止めていることだ
信じられることが 自分が自分を認められることであり
自分の弱さに敢えて戦を挑むことが
自分を守る強い力に その期待に応えること
それが生きるということだよ

苦言

後悔をさせないため 敢えて君に苦言を呈します
細やかな過ちなら謝れば人は許してくれるかもしれない
しかし
その一線を越えてしまったときには
元には戻らないし やり直すチャンスなど与えられないんだよ
若さ故の過ちだといっても許されるものではないし
情緒不安定だったと言っても 誰も許してはくれないんだ
だから 今が最も大切だから
君に叱咤を贈るのです

未熟者

未熟者を心配するのは 未熟者の心意気
未熟者は 他人の心配をする
未熟者に限って あくせく働く
未熟者は 単純に感謝する
未熟者は 直ぐに怒る
未熟者は 直ぐに人を信じる
未熟者は 何事も諦めない
未熟者は 死ぬ事を恐れる
未熟者は 簡単に溜め息をつく
未熟者は 知らず知らずの内に他人を傷つける
未熟者は 過ぎた望みを抱く
未熟者は 今の有り難さを忘れる
未熟者は 夕陽を眺めて明日への希望を抱く
未熟者は 楽天的だと言い放つ
未熟者は 嫌いな相手でも平気で愛想を振り撒く
未熟者は 付き合いが下手でいつも誤解される
未熟者は 因業者だと言われても素直にありがとうとは 言えない
未熟者は 本心を口にしない
未熟者は 昔(思い出)に生き 今の世の中に憂いを持ちながら
それでも 望みを抱く
未熟者は 素晴らしい
未熟者は 次への手掛かりを模索している

詩集 【全12回】 公開日
(その1)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年7月17日
(その2)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年8月26日
(その3)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年9月6日
(その4)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年10月4日
(その5)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年11月1日
(その6)嵯峨野 嘉竹 詩集 2019年12月6日
(その7)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年1月10日
(その8)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年2月7日
(その9)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年3月6日
(その10)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年5月1日
(その11)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年5月29日
(その12)嵯峨野 嘉竹 詩集 2020年6月30日