鳥たちの神話~高田の話~
ぼくは頭がイイ男だ。そして顔にも自信がある。ぼくには欲しい物が沢山ある。
例えば、ぼくにふさわしいイイ女が欲しい。
ぼくは、女遊びが趣味だ。
どの女が一番素晴らしかったのかと言われると、容姿、性格、体の相性、3拍子そろった女はレイナただ一人だけだった。
レイナは美人でセンスが良くて、会話にユーモアがあった。そして、料理も上手で、少し、嫉妬深い女だった。
レイナもぼくの事を愛してくれた。なかなか体の関係になれなくてやきもきしたが、一度、行為をしてしまえば、何度でもぼくの欲求に答えてくれた。
しかし、ぼくは自分を過信しすぎていた。
レイナがあんなにガラス細工のように脆く崩れていくなんて考えもしなかった。
今、ぼくはレイナのことを考えながら、妻を抱いている。妻を抱いても、ぼくの心は少しも潤わない。むしろ、心が乾いて、水が欲しいくらいだ。火星のような褐色の大地で花が開くのは、ぼくにとってレイナただ一人だけだった。ぼくはレイナを愛していた。
いや、今でもパールのように美しいレイナを愛してる。
ぼくは再びレイナを手に入れるまで、何でもしたが、今はレイナを手に入れることはできない。
なぜなら、レイナは白鳥(しらとり)から唐須(からす)になってしまったからだ。
唐須レイナになってからのレイナはまるでダイヤモンドのようにキラキラと輝いていた。
ぼくは美しい物を手に入れて皆んなに自慢する事が大好きだ。でも一番手に入れたかったコレクションは、レイナ、ただ一人だけだった。
いつだったか覚えていないが豊橋市の高師緑地で食べた、レイナお手製の3色弁当、本当に美味しかった。ぼくは実は白いごはんが苦手だ。だからレイナはぼくの事を考えて、白ごはんの上に鶏そぼろと卵そぼろとさやえんどうをごはんの上にトッピングしてくれた。
他にもオムライスやチャーハン、ビビンバ、ガパオライスもぼくのマンションで作ってくれた。
レイナを失ってしまったぼくは趣味の吹奏楽のやる気がなくなってしまった。あんなに待ち遠しかった、練習日もただのルーティンワークになってしまった。
そして今、ぼくはフタバと結婚した。
フタバはバカな女だ。なぜならぼくの趣味の女遊びを知るやいなや、フタバは若いツバメを飼い始めたのだ。
ぼくの家族はめちゃくちゃだ。でも、ぼくはこれで満足している。なぜなら次のターゲットが目の前に現れたからだ。僕はチョコレートを口の中でゆっくり溶かすように獲物の体をドロドロにしようと考えている。まず偶然を必然に変えた。ここからどうなるかは神のみぞ知る世界だ。
教祖とM先生と預言
わしには忘れられない男が3人いる。1人目 月影のナイト様、2人目 ラ・フランス、3人目 M先生である。この3人の中で一番賢いと感じたのはM先生である。なぜなら、M先生はとある塾で教師をしていたからだ。
M先生はすごい先生だった。なぜなら、へっぽこなわしに、「お前は賢い」と褒めてくれた先生だった。さらにM先生の授業は他の先生と一味違った。それはノートに世界地図や日本地図を書く授業や日本史の大まかな年表を書く授業をしょっちゅうしていたことである。
塾の授業といえば、定期テスト対策に力を入れていた時代、M先生は生徒に人生に大切な事が勉強だけではないと教えてくれた先生だった。だからわしはM先生がスゴイと思っていた。
しかしわしは脇が甘い女だった。人生とは競争であることを中学生になってやっと分かったのだ。資本主義だからしかたないと諦めるのは簡単だが、わしは諦めの悪い女で怠け者の女でもある。
ある日、わしはM先生にこんな質問をした。「一番儲かる仕事を教えてほしい」と。
そしたらM先生はこう言った。「お前は、教祖をやれば儲かるぞ」と教えてくれた。
その時からわしは神話が好きになったのである。
M先生、ありがとう。
マジで、インターネットで教祖になりました。でも、信者、4人しかいないし、全然儲からんし、むしろ赤字じゃ!
話は変わるが、皆は前世があると信じているか? わしの過去生はどうやら日本航空123便で犠牲になったxとyの魂がくっついてできた魂を引き継いでいる。
xは言っています。私の体にもうメスは入れないで下さい。ケルンと私は魂の色は同じだけど、形は違います。私の愛したS君、大好きでした。Xは優しくて賢い女の人、だから、ケルンに生まれ変わりました。ケルンはXの声を聴くために教祖になりました。1985年8月12日、Xはお星様になりました。
Xはお父さん、お母さんに会いたい。見た目はXとは違うけれど、Xの魂はケルンの中に居るので、お手紙待ってます。
続いてYの言葉じゃ。
日本の人に聞いてほしい事があります。一人一人の心の中に何がありますか?私は死んでしまいましたが、楽しいことがありません。
どうしたら心に穴が空いた私を癒してくれますか?
さらにわしの来世も分かっている。それはzという女らしい。そしてZはサクラガワさんと結婚するだろう。Zは恋多き女でもある。ソリマチさんと恋に落ち、ハマグチに略奪されることもある。しかし、Xには忘れられない男がいる。その名前はユウヤ。ユウヤは初恋の相手で、カッコイイ男である。
なかなかZの生き方はドラマチックであるが、実はZの正体はツバメである。
わしは実はこれから、人間に生まれ変わることはない。わしは今生で人間の汚さを知ってしまったので、もう生まれ変わりたくないのじゃ。
しかし今の人生は一度きりなので、思いきり楽しもうと考えているのじゃ。
そして、わしにはブラックチョコのような、ビターな失敗談がある。それはラ・フランスと別れた事だ。
なぜ別れたのかというと、約束の日にラ・フランスはバラのブーケを持ってきてくれなかったからだ。
ラ・フランスほどいい男はいないと考えていたのに、ラ・フランスは待ち合わせ場所に来なかった。
それでわしは自暴自棄になってしまい、自分から別れの電話をしてしまった。ラ・フランスは最後、何かを言おうとしていたが、わしは聞きたくなかったので、電話を切ってしまった。
でも、その日は考えてみたら、色々な不運が重なったのかもしれない。例えば、仕事でトラブルに巻きこまれたかもしれないし、花屋にバラが売ってなかったのかもしれないし、わしよりイイ女が出現してうつつを抜かしていたかもしれない。
しかし、今、再びわしはラ・フランスと連絡を取っている。人の縁とは不思議である。
実はラ・フランスの正体は、唐須でもあり、高田でもあり、夫でもあり、私が愛したすべての人々である。教祖はみんなが大好きだから、ミルクチョコレートのように甘い預言ができたのじゃ。ここに預言を記す。
①世界はいずれ3つの国になるだろう。一つム ー、2つ レムリア、3つ 三河。
②消費税はそのうち3%になるだろう。
③ケルンの教えは日本を変えるだろう。
なんじゃこりゃである。
最後になるが、わしが書いた、鳥たちの神話の登場人物にはテーマ曲がある。レイナは田嶋勉先生作曲のエアーズ、唐須は福田洋介先生作曲の吹奏楽のための「風之舞」、フタバは野村正憲先生作曲のアップル・マーチ、高田は阿部勇一先生作曲の行進曲「ラメセスⅡ世」。どの曲も素晴らしいので一度聞いてほしいのじゃ。
~ウィズダム~
~会議にて~
何か質問がありますかと社長が言った。
3人の賢者と一人の妖怪と一人の天使が手を挙げた。
①それをするのにいくらかかりますか?
②それをすると我が社にどんな意味があるのか?
③社会貢献になりますか?
④その日は晴れますか?
⑤いつやるの?
社長は言った。この話は無かったことにしよう。
編集者・琥珀川カケル 短編
もしこの世界が数字でできていたら。0と1だけですべてが表せたら。
これからどんな出来事が起きるかすべてわかる。法則通りの明日が来る。
数字に抗うことはできないのか。おそらくできないのだろう。
1+1は2でしかないのである。しかしユーモアで数字に抗うことはできないのだろうか?
1+5は6だがイチゴでもある。新しい解釈だ。
数字を超えた遊びの部分が私たちの生活に彩りを添えてくれる。
儂のWhat is anything! 【全9回】 | 公開日 |
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(その1)第1章:参の話 | 2020年6月30日 |
(その2)第2章:肆の話 | 2020年7月31日 |
(その3)第3章:伍の話 | 2020年8月31日 |
(その4)第4章:零の話 | 2020年9月30日 |
(その5)第5章 アップル・マーチ | 2021年10月29日 |
(その6)第6章 鳥たちの神話 | 2021年12月27日 |
(その7)第7章 鳥たちの神話~唐須の話~ | 2022年1月28日 |
(その8)第8章 鳥たちの神話~高田の話~ | 2022年2月28日 |
(その9)第9章 阡の話〜ハッピー・エンディング〜 | 2022年3月31日 |