スマートフォンなどの電子タブレットの普及によって急速に広まった電子書籍は、新しい読書のあり方を提示しました。
しかし、紙の本が持っている独特の匂いや手触り、読書体験などを愛されている方もまだまだ多いはずです。
本稿では、そんな電子書籍ではまだ再現できない、紙の書籍ならではの良さについて、実際に行われた科学的な実験データを元に再確認していきます。
紙の書籍は、電子書籍よりも優れている点があることを示唆する研究がいくつも存在します。
読書の手段として、実証されている紙の書籍を選択するメリットは以下のものです。
・読解力が電子書籍に比べ増す可能性がある
・ページをめくるなどの、操作性が良い
以下よりそれぞれについて、実際の研究データを交えつつ紹介します。
アメリカの科学誌『Scientific American』にFerris Jabr氏によって寄稿された記事(1)では、多くの読者にとって電子書籍よりも紙の書籍の方が、文章を読んだ際の理解度が上であると紹介しています。
いわく、デジタル画面のテキストを読む場合、紙の書籍で読んだ時に比べ、私たちの脳の文章全体の構造を把握する能力が下がるとのこと。
そのため、結果的にそのまま流し読みをしたような感覚になり内容への理解度が下がっているというのです。
また、紙媒体と液晶画面の違いが読書にもたらす影響ついて調査した別の研究(2)でも、デジタル画面の文章を読んだ後では、同じ時間でも紙媒体よりも読後の眼精疲労が多く見られたことが報告されています。
この実験ではモニターの輝度を変えても眼精疲労は変わらなかったものの、液晶画面を紙のように配置した場合はそれが起こらず、読書の妨げとはならなかったそうです。
ここから察するに、明るさに関係なく液晶画面から発生する直線的に目に入るのが問題だということなのでしょうか。
次のページへ進む、指定したページを開くなどのページめくりの点においても、紙の書籍に有利な研究が存在します。
東京電機大学理工学部で行われた『電子書籍と紙書籍に関するユーザビリティ比較』の実験報告(3)によると、電子書籍では紙の書籍に比べ細かいページ操作に時間がかかっていたそうです。
この実験では140ページと240ページの紙と電子両方の書籍をそれぞれ用意し、計4種類の書籍を使ってユーザーのページ操作速度を調べています。
実験結果としては「指定のページまで大まかに開く動作」「ページを過ぎた場合に逆に戻る動作」ではそこまで違いは見られませんでした。
しかし、「指定したページに向けて1ページずつ細かくめくる動作」においては大きく差が開き、紙の書籍に比べ電子書籍では倍近くの動作時間がかかっていました。
また、富士ゼロックスが発表しているテクニカルレポート(4)でも、紙の書籍と電子書籍の操作性の違いがもたらす影響についての研究に関する報告がされています。
このレポートによると、小説などの「娯楽を目的とした読書」においては、電子書籍は紙の書籍に比べ若干操作性は悪いものの、そこまで読みに影響は与えないとのことです。
しかしながら、それが「答えを探すことを目的とした読み」、つまり勉強目的での読書や資料の相互参照の領域に変わると、紙の書籍の方が電子書籍に比べ大幅に使い勝手の面で勝ると言うことが判明しています。
それもそのはずで、そもそも電子書籍は文章を同時に閲覧できず、複数のデバイスを同時に並べたり重ねたりといった使い方をすることは想定されていないのですから。
筆者も、しおりや付箋を貼って特定の情報に再アクセスすると言う点においてはまだまだ紙の書籍が便利だと感じており、このような利用の仕方をしている方も多いのではないでしょうか。
電子書籍は便利ではあるものの、紙の書籍にも負けていない点があることがわかっていただけたかと思います。
この結果は、安易にペーパーレス化が叫ばれる社会情勢に一石を投じるものですが、筆者は決して電子書籍を否定しません。
紙の書籍にも電子書籍にもそれぞれメリットがありますので、その両方の良いところを享受できる使い方をしていくことが大切なのではないでしょうか。
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