著者インタビュー

出版後は、知人からの賛辞、講演、誌面での紹介などインパクトのある数か月がすぎていきました。

日本が終戦を迎えた1945年、インドネシアではオランダからの独立を目指した戦争が本格化しようとしていた。母国を離れインドネシアに駐留している高木中尉を中心とした1000人の日本軍は、その独立戦争に巻き込まれることとなる。彼らは、祖国ではない国に骨を埋めることを自ら希望し、他国の戦争に命をかけたのだった。 

―出版をされたきっかけを教えてください。

一昨年、インドネシア(ジャワ島)に駐在中、インドネシア独立戦争に興味を持ち、この戦争に参加した残留日本兵の行動と戦場跡、そして手厚く祀られている霊園を訪れました。また、ボゴールにある日本軍が創設したPETAという軍事学校(郷土防衛義勇軍)にも何度も足を運び、いかに日本軍がインドネシア独立にかかわったかを学びました。独立戦争を指導して、勇敢に戦った生き残った日本兵も高齢のため亡くなり、最後の英雄である小野盛さんも私の駐在中に亡くなりました。

独立から70年も経つと、語り部がいなくなり、あの苛烈な独立戦争の史実が薄れていき、インドネシアの若者の多くは「独立の勇者たち」の存在さえ知らないものが多くなりました。日本に帰って、多くの日本人に、インドネシアと独立運動にかかわった日本兵のことを聞いても、ほとんどの人がその史実を知らず、がっかりしました。これではアジア独立のために命を棄てた多くの英霊に申し訳ないと思い、この本を書く決心をしたのです。

この本は、ジャワ島で繰り広げられたオランダ軍相手の戦争物語ですが、次にスマトラ島での物語を書きたいと思っています。また、今年2月、天皇皇后両陛下がベトナムを行幸され、ベトナム独立戦争に参加された残留日本兵の遺族と親しく面談されましたが、フランス軍相手に戦った日本兵の物語を書きたいとも思っています。

―出版前後で何か変化はありましたか?

知人、友人から「あの幻冬舎からの出版ですか?」と驚きと讃辞をたくさんいただきました。

拓殖大学の理事長や理事から、この史実について学生に話してほしいということで、大講堂で講演しました。また東京ドームホテルで開催された新年会でも壇上から話す機会が与えられ、ボクシングやレスリングの世界チャンピオンとともに『勇者は語らず』が紹介されました。北海道でも、この史実について講演しました。

桜チャンネルやチャンネルAJERなどに30分間のインタビュー出演をし、さらに、防衛省現役隊員が読む「朝雲」紙、退役が読む「隊友」紙の話題の本という欄に紹介され、日刊スポーツ紙、拓大OB会の月刊誌「茗荷谷ニュース」にも紹介記事がでました。加えて、ある映画監督から「映画化は面白いね。ただ金がかかる内容ですね」とコメントされるなど、出版後、かなりインパクトのある数か月がすぎていきました。

天皇皇后両陛下がベトナムを行幸され、ベトナム独立戦争を戦った残留日本兵の遺族と親しく面談をされたのですが、日本にいる息子さん(母親がVietnam人)が僕の本を読み、いたく感動したので、『勇者は語らず』のベトナム版を書いていただきたいと言ってこられました。ノンフィクション小説のインパクトは、すごいものがあることを改めて知りました。

―編集者とのやり取りで印象深かったことはありますか?

編集担当者は大変な才女である上、とても親切で、内容をよく読み込み、多々アドバイスをいただきました。多くの間違いを発見してくれて感謝しています。例えば、イスラーム教の大切な1日5回のお祈りの名前を間違って書いてしまい、ファジュル、ズフル、アスル、マグリブ、イシャの順序が一部間違っていることを発見してたのです。これに気が付かないまま本にしてイスラーム教徒が発見したなら、不敬者として糾弾されたかもしれません。

また、「プリタル義勇軍の反乱」のブリタルは中部ジャワの小都市と思い込んでいましたが、「この地は中部でなく東部のはずです」と指摘してくれたり、多くの地名を一つ一つ懇切に調べて、間違いを正してたりしてくれました。本当にありがたかったです。

プロジェクトには3大要素があります。
1.期日を守ること
2.良い仕事をすること。
3. 瑕疵がなく、安全であること。
見事にこの三原則を実行してくれました。さすが幻冬舎ルネッサンスの社員だと感心した次第です。

―著書に込めた想いを教えてください。

第二次世界大戦と日本について、日本のマスコミも教育も日本人の大半が「あの戦争は日本が悪かった、アジアの人々と国国に迷惑をかけた」という過度の自虐史観にとらわれていることに、僕は以前から違和感を持っていました。

日本はアジアで本当に悪いことをしたのか? そんなことはありません。当時のアジアの独立国は日本とタイだけでした。他の国々は白人による植民地でした。インド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、マレイシア、シンガポール、香港はイギリスの植民地。ベトナム、カンボジア、ラオスはフランスの植民地。フィリピンはアメリカの植民地。インドネシアはオランダの植民地。これらの国々は一切の自由はなく、差別され、搾取され、人々は奴隷状態でした。アジアは300年以上絶望の世界に置かれていたのです。

白人の国々は、自分たちは優勢人種、有色人種は劣っているとバカにし、植民地からの搾取により栄華を誇っていました。日本は、アメリカ、イギリス、オランダ、オーストラリアなどから経済制裁や、数々の無理難題を押し付けられ、堪忍袋の緒が切れ、これら白人国に戦いを挑むことになります。そして圧政に苦しむアジアの国々に独立の火を焚きつけたのでした。

結果、日本はアメリカに負けましたが、アジアでは、白人による植民地主義は終焉を迎え、すべての国が独立することができました。日本はアジアの解放という理想を実現させることに成功したのでした。この史実を、インドネシアに残留した日本兵の血と涙と汗の物語として『勇者は語らず』を書き上げました。

私の言いたかったこと、それは「あの戦争(大東亜戦争)は侵略戦争ではなく、アジア独立のための正義の戦争だった」の一言です。

次は、ベトナム独立戦争に参加した日本兵の物語を書きたいと思っています。彼らは士官学校の教官として、フランス植民地軍に戦いを挑み、独立させました。その後、ベトナムを中国の侵略から守り、ベトナム戦争でアメリカと泥沼の戦いを続け、ついにアメリカを敗退させた、すごい男たちの史実を書きたいのです。


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