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漢字とひらがな、どちらを選ぶべき? 当て字表記に気をつけよう|小説の書き方講座

原稿を書いていて、漢字で書くべきかひらがなで書くべきか、迷ってしまうことはありませんか。

「まあどちらでもいいだろう」と思われるかもしれませんが、実は使い分けには基準があります。

日本語の慣例を知ることで、表記が統一された整った原稿を仕上げましょう。

 

ひらがなで表記したい言葉

近年、日本にはたくさんの当て字が生まれています。

そうした当て字の多くは、常用漢字に含まれていない文字を使用しています。

常用漢字とは、一般的な社会生活では使用したほうがよいとされている字のことです。

当て字のなかには長く使われるなかですっかりおなじみとなり、まるで常用漢字であるかのように見えるものもあります。

しかし、それらはあくまでも当て字なので、通常であれば原稿には使用すべきでないとされています。

本節では、そうした紛らわしい当て字をご紹介します。

まずはこちら。よく見かける当て字です。

 

<例>
×出来る  〇できる
×沢山   〇たくさん
×兎に角  〇とにかく
×素敵   〇すてき
×無理矢理 〇むりやり
×無駄   〇むだ
×何時   〇いつ
×好い加減 〇いいかげん
×誤魔化す 〇ごまかす

 

いかがでしょうか?

当て字だとは気づかずに、漢字で書いていたものも多いのではないでしょうか。

また、副詞・副助詞はひらがなで書くことが推奨されています。

こちらも念入りにチェックしましょう。

 

<例>
×何故  〇なぜ
×予め  〇あらかじめ
×何れ  〇いずれ
×未だ  〇いまだ
×概ね  〇おおむね
×直ぐに 〇すぐに
×遂に  〇ついに
×殆ど  〇ほとんど
×先ず  〇まず
×未だ  〇まだ
×等   〇など
×迄   〇まで

 

以下のような接続詞も、ひらがなで書くのが慣例となっています。

 

<例>
×或いは 〇あるいは
×尚   〇なお
×拠って 〇よって

 

人や物を指したり、方向を示す言葉である指示語にも注意が必要です。

 

<例>
×貴方  〇あなた
×此方  〇こちら
×其方  〇そちら
×其れ  〇それ
×何れ  〇どれ

 

名詞にも、ひらがなで書くべき言葉があります。

 

<例>
×咽喉  〇のど
×硝子  〇がらす
×胡坐  〇あぐら
×煙草  〇たばこ

 

このように、実は当て字は無数に存在します。

全てを覚えるにはかなりの労力がかかります。

重要なのは、執筆中に「漢字かひらがなか」の2択をつねに思い浮かべておくことです。

気になったそのつど確認することで、文章力は徐々に磨かれていきます。

 

状況によって漢字・かなを使い分ける言葉

文章全体の雰囲気や、前後の文脈、伝える相手・目的などによって、漢字・かな表記が変化する言葉もあります。

 

<例>
有難う ⇔ ありがとう

 

この場合、漢字表記とかな表記で意味が異なるということはありませんが、与える印象が変わってくることに気付くでしょう。

「有難うございます」はややかしこまった堅い印象なのに対して「ありがとうございます」はやわらかな印象を受けるはずです。

ビジネスの現場では前者、お世話になっている習い事の先生には後者などというふうに使い分けられるかもしれません。

 

下さい ⇔ ください

 

この二つは、明確に用法が異なるので注意が必要です。

あるものを要求するときには「下さい」、ある動作を促すときには「ください」を使います。

つまり「水を下さい」と「水を売ってください」の違いです。

漢字・かな表記のどちらも使用できますが、一方は誤りになると言えます。

以下の形式名詞や補助動詞も使い方に注意が必要です。

 

<例>
事 ⇔ こと
所 ⇔ ところ
物 ⇔ もの
通り ⇔ とおり
見る ⇔ みる
行く ⇔ いく

 

上の4つのうち、ひらがなで書かれているものは形式名詞と呼ばれています。

形式名詞はその名のとおり、言葉の意味が失われて形だけが残った名詞です。

元々の意味から変化して使用されているものは、ひらがなで書くと考えましょう。

「所」を例にして、これらの使い分けについて説明します。

「所」には具体的な場所を表す意味と、具体的な場所を指しているわけではない用法の二つがあります。

「所変われば品変わる」とは、土地柄によって文化が変わることを表した慣用句です。

そのため、具体的な場所を指している「所」は漢字表記になります。

対して「そういうところが君の欠点だ」という場合には、「ところ」という言葉は場所を示しているわけではありません。

元々の意味が失われているため、ひらがなで表記するのが慣例とされています。

また、モラルの問題から漢字の使用を控えるべき言葉もあります。

 

<例>
障害=障がい
子供=子ども

 

以上の例を見て思い当たる節があった方は、ご自身の原稿を見直してみましょう。

特に副詞・副助詞・形式名詞・補助動詞の誤った漢字表記はよく見受けられます。

原稿執筆時の段階から注意しておくことで、のちのち修正する手間を省いてしまいましょう。

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