絵本にロングセラーが多い理由 親から子、子から孫への書籍のバトン
書店の絵本売り場では、何十年も前に刊行された作品が、今なお根強い支持を受けて売り出されているのを目にすることがあります。
いくつか具体例を見てみましょう。
- マーシャ・ブラウン 絵/せた ていじ 訳『三びきのやぎとがらがらどん』(1965年、福音館書店)
- 松谷 みよ子 ぶん/瀬川 康男 え『いないいないばあ (松谷みよ子 あかちゃんの本)』(1967年、童心社)
- なかがわ りえこ 作/おおむら ゆりこ 絵『ぐりとぐら』(1967年、福音館書店)
- エリック・カール 作/もり ひさし 訳『はらぺこあおむし』(1976年、偕成社)
これらの作品はどれも数十年前に刊行されたものですが、今なお多くの読者に愛されています。
2021年5月、『はらぺこあおむし』の作者エリック・カール氏の訃報が各種メディアで大きく取り上げられたことからも、その絶大な影響力を窺うことができますね。
絵本作品がこのように、数世代にわたって長く愛されるのは、いったいなぜなのでしょう。
本コラムでは、絵本作品がロングヒットする理由をご紹介します。
はじめは不評だったヒット作 『かいじゅうたちのいるところ』
絵本作品の主要ターゲットは、子どもとその親御さんです。
つまり、読者層が比較的絞られるジャンルということ。
したがって、何年もかけてじわじわ話題になっていくのが自然なスタイルなのです。
たとえば、モーリス・センダック 作 じんぐう てるお 訳の絵本『かいじゅうたちのいるところ』(1975年、冨山房)は当初、図書館での貸し出しが禁止されていたそうです。
しかしその後、子どもたちがあまりにこの作品に夢中になってしまったため、図書館司書や教師も本作のすばらしさを認め、現在の絶対的な地位を築くに至ったのだとか。
刊行後まもなく爆発的なヒットを記録したあと、現在も首位を独走中という驚異的な作品もある一方で、読者から堅実に評価を獲得してロングランを続ける作品もあるということですね。
絵本にロングセラーが多い理由
親御さんにとって何より大切な子どもたち。
読ませる本選びにも慎重になるのは当然のことですよね。
そのため保護者は、自分が幼少期に触れた名作を自分の子どもにも読ませたいと感じる傾向にあります。
昨今、企業の宣伝よりも口コミの方が信憑性の高い情報として信じられるようになりました。
絵本においてもまた、言わば親から子への口コミが効果的に働いているのです。
休みの日には、ぜひ書店の絵本コーナーに立ち寄ってみてください。
そこには皆さんが子どものころの作品が、変わらない姿であなたを待っています。
そして同時に、皆さんのお子さんやお孫さん、そしてその先の世代が夢中になる未来の大ヒット作もそこには並んでいることでしょう。