ベストセラー入りのきっかけは「帯」? 本の売上を劇的に変えた帯を紹介
出版した本の売り上げを一気に上げる方法があることをご存知でしょうか。
それは、本の「帯」にこだわることです。
書籍のカバー下部に巻きついていて、キャッチコピーや推薦文が印刷されているあの「帯」です。
今回は、帯がきっかけで大ヒットした本の事例を見ることで、どんな帯にしたら売り上げが上がるのかを見ていきましょう。
可能なかぎりターゲットを絞り込む
1986年に刊行された外山滋比古氏の『思考の整理学』が、21年の時を経て2007年にブレイクしたことをご存知でしょうか。
本書は今や、約190万部を売り上げる大ベストセラーにまで上り詰めています。
きっかけは盛岡市の書店員である松本大介氏の手描きPOP「“もっと若い時に読んでいれば…” そう思わずにはいられませんでした」でした。
このポップが書店来店者の支持を獲得したことを受け、出版社が正式にPOPの文言を帯に使用して販売したところ、爆発的にヒットしたという事例です。
ここで、ヒット前に販売されていた帯なしの書籍を見てみましょう。
こちらは一見すると、研究者向けの難しい本というイメージです。
ところが、帯をつけるとこのように変化します。
(出典:筑摩書房)
「東大・京大で1番読まれた本」と書くだけで、ぐっと書籍のインパクトが強まりました。
同大学を目指す受験生をはじめ、教養を深めたい大学生や若年層の心を惹きつけるキャッチコピーです。
また、「“もっと若い時に読んでいれば…”」の方は、改めて自分の経験を見つめなおしている中高年に刺さるメッセージですね。
思わず読んでいないことに危機感を覚える、上手な煽り方です。
恋愛小説は口コミを味方につける
次は、帯を変更して売り上げが10倍に増えた、七月隆文氏の『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を見てみましょう。
本書は2014年8月に刊行し、2ヵ月後の10月に2刷が決定。
そのタイミングで帯も変更したところ、そこから売り上げが10倍に伸び、現在は50万部突破、2016年には映画化も決定している人気ぶりです。
では、初版時の帯と2刷以降の帯を比較してみましょう。
初版
2刷以降
初版時の帯は、本作の魅力である「彼女の秘密」にフォーカスした内容になっています。
対して2刷以降は「泣ける」「読書メーターで大反響!!」「電車で読んだのが間違いだった…」など、読者の声を入れることで、誰もが共感できる作品であることを示しています。
なお読書メーターとは、読んだ本を記録したり書評を投稿できる読書サービスのことです。
2006年に出版され大ヒットとなった『恋空』も、ケータイ小説サイトでの人気ぶりを大きく宣伝していました。
若年層をターゲットとした恋愛小説は、感想を共有する口コミがヒットの引き金になります。
出版社の売り文句よりも、自分と同じ読者の声の方が高い信憑性をもつこともあるのです。
以上、帯がきっかけて大ヒットした本の事例をご紹介しました。
大切なのは、本のターゲットを絞り込んだうえで、その層に合わせた表現をすることです。
他にも様々な事例がありますから、ぜひチェックしてみてください。