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特別連載インタビュー

本を書くためには本を読め

──小説家になるためには、やはりたくさん本を読むべきでしょうか?

 恩田:はい、それはもう絶対そうだと思います。私自身、とにかく自分が面白い本と思える本は片っ端から読みました。若い頃は「面白いことがいちばん偉いことだ」と思っていたので、純文学のなかでもとくに私小説が苦手でした。志賀直哉なども一応読んではいましたが、その良さがまったくわからなかった。でも最近は、おかげさまで私小説の「面白くなさ」も「面白い」のうちなんだな、と思えるようになりました(笑)。

 とくに好きだったのは海外の「異色作家」と呼ばれるような人たちですが、世間的には「B級」というジャンルに入れられていて、それほど評価が高くない。たとえば『地獄の家』などで知られるリチャード・マシスンという作家が私は好きなんです。ものすごく面白い小説を書くし、たいへんなテクニックの持ち主なのに、パルプ・フィクションの作家として片付けられがちなんですね。でも私は、物語を面白く読ませるためには技術が必要で、それがどんなものであるかは子どもの頃から薄々察していたんです。だからマシスンのように面白く読ませる技術をもっている作家のことはとても尊敬しています。

 好きな本があれば、それがまた別の本を連れてきてくれる。あるいは自分が好きな作家が薦めてくれる本を読むのもいいでしょう。私が子どもの頃は、筒井康隆さんや福島正実さんなど、SFを知り尽くしている方がブックガイド的な本をたくさん書いていました。それに載っている作品をほとんど読むことで目を見開かされた経験があるので、そうしたブックガイドがあることはいまでも大事だと思います。

Interviewer=仲俣暁生
Photographer=三原久明

著者プロフィール

恩田 陸おんだ りく

1964年、宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』でデビュー。
2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞および第2回本屋大賞を受賞。
2006年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞を受賞。
2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞を受賞。
2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木賞と第14回本屋大賞をダブル受賞。著書多数。

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