──小説家を目指す方の中には、書いてる途中にどうしてもモチベーションが上がらず最後まで書き切れないことに悩んでいる人もいます。山田さんはモチベーションが下がることがありますか?
山田:モチベーションは下がったことがないですね。むしろ執筆中はずっとモチベーションは上がっていました。
やっぱり印税に対する貪欲さが違うんですかね(笑)。…というのは冗談だとしても、僕はこの仕事がもう駄目になったら他はないぞ、崖っぷちだぞ、という気持ちでやっていたので、モチベーションが上がらないから書き切ることができないっていう悩みはなかったです。
それこそ、目的が大事なんですよ。僕の場合は「小説で食べていきたい」っていう目的があった。
商業目的で専業作家をやるのでなければ、別に売れなくてもいいわけだから、純文学であろうが恋愛であろうが、自分が本当に好きなジャンルをやればいいわけですよ。
でも、作家として食べていくというか、生活していくという目的があるのであれば、絶対に今の世間に何が売れているのかを研究する必要があると思います。例えば今からやるなら純文学よりもエンタメのジャンルがいいんじゃないかなとか。そういった市場の分析と、もうひとつ大事なのは何か大きい武器を持つということ。
特別文才があるとか、特別話が面白いとか、その本人にものすごいスター性があるとか。あるいはこのジャンル、この分野であれば絶対に負けないとかね。
自分を客観視して、冷静にいろんなものと見比べてみて、これはどうしても負けるなとか、この部分は絶対自分は強いはずだ、とかね。
でもそこから評価してもらえるかは別だし、評価してもらっても売れるかどうかはまた別。どうしても運という要素も必要です。けれど、まずは武器を持つことで何かしら道は開けるんじゃないかなと思います。
──最後に、これから自費出版に挑戦したいという人に一言お願いします。
山田:とにもかくにも、第1段階としてやるべきは「本を出してみる」こと。
例えばアイデアを持ち込んで、出版社の人に見てもらうパターンもあります。この話は絶対に面白いはずだし、タイトルもキャッチー。ただ、自分には書く能力がないからとりあえず企画を見てくれ、とかね。
本当に出版をしたくて、本当に行動力がある人であれば、そういうことをするはずなんですよね。そこから実際に出版できるかはまた別だけど、行動力はやっぱり大事です。
なので、まずは書き上げて出版社に送ってみてください。今は出版社側のサポートも手厚いし、数年前に比べて出版数も増えているみたいなので、チャンスはあると思います。
僕も自費出版でもう一回出そうかな(笑)。
Interviewer=篠原舞
Photographer=片山貴博
1981年東京都生まれ。デビュー作『リアル鬼ごっこ』は、発売直後から口コミで評判となり、累計200万部を超える大ベストセラーとなる。
他の著書に『親指さがし』『×ゲーム』『復讐したい』『神様のコドモ』(すべて幻冬舎)、『名のないシシャ』(角川書店)、『その時までサヨナラ』(文芸社)、『僕はロボットごしの君に恋をする』(河出書房新社)など。
映像化された作品多数。