自費出版について

自費出版でも印税はもらえる?自費出版の利益について解説

自費出版では正確な意味での印税が発生することは、あまりありません。ただし出版社が費用を負担して増刷した場合などは、自費出版でも印税は支払われることがあります。

この記事では「自費出版の印税」「印税額を決める要素」「自費出版で得られる印税以外のメリット」について解説します。

「自費出版で印税を得た場合にかかる税金」「自費出版で得られる印税以外のメリット」についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

自費出版では基本的に印税は発生しない

自費出版では、印税が発生するケースは稀です。ただし出版社が費用を負担しての増刷・重版が決まった場合には、印税は支払われるケースもあります。 自費出版の印税について、詳しく解説します。

印税とは何か

自費出版で印税が発生しない理由を説明するために、まず印税について解説します。

印税とは「出版社が著作権使用料として著者に支払うお金」です。

本の発行部数に応じて支払われる場合は「買取印税(発行印税)」、売上部数に応じて支払われるなら「売上印税」と呼ばれます。一般的なのは売上部数に応じて印税が支払われる「売上印税」です。

売上印税の計算式は「販売部数×販売価格×印税率」となります。つまり「販売部数」「販売価格」「印税率」が印税の額を決める要素です。

自費出版で印税が発生しない理由

印税は出版社が著者に支払う「著作権使用料」です。

しかし自費出版では著者が出版費用を負担しているため、「出版社が作品を使っている」わけではありません。そのため「著作権使用料」である印税は基本的に発生しません。

自費出版では印税は発生しませんが、出版社との契約に基づき、本の売上に応じて「売上還付金」や「売上分配金」が発生する場合があります。

売上還付金とは「本の売上から経費を引いたお金」であり、計算式は「販売価格×売上部数-流通・配送などにかかる経費」となります。

自費出版で印税が発生するケースとは

自費出版でも、以下のようなケースでは印税が発生します。

  1. 出版社が「著者が予定していた出版部数」に部数を上乗せした
  2. 出版社が増刷・重版を決定

いずれも出版社が費用負担する「上乗せ分」や「増刷・重版分」にのみ、印税が発生します。 「作品のクオリティが高くて売上が見込まれるため、発行部数が増えた」「本が話題・人気になり売れているので、増刷・重版が決まった」といった場合には、印税が発生する可能性があります。

印税率の相場とは

印税の額を決める要素のひとつが「印税率」です。印税率の相場や、印税率についての注意点をご紹介します。

商業出版の印税率は10%以下が相場

商業出版の場合、印税率は販売価格の10%以下が一般的です。 商業出版でも自費出版でも、印税率は出版社との契約に基づいて決まります。 そのため出版社や著者によって、印税率はまちまちです。また同じ本に「原作者と翻訳者」「著者とライター」がいる場合には、印税は分けられます。

電子書籍のロイヤリティは高い

電子書籍を発行できる「Kindleダイレクトパブリッシング(KDP)」には、印税にあたる「ロイヤリティ」が設定されています。

KDPのロイヤリティは35%または70%。電子書籍では印刷代などがかからないため、紙の出版よりもかなりロイヤリティが高くなるのが特徴です。 電子書籍を「KDPセレクト」というプログラムに登録するとロイヤリティが70%になり、「読まれたページ数に応じてロイヤリティが発生する」といった運用が可能になります。

印税率だけで出版社・出版方法を選ぶのが避けた方がよい理由

印税率が多ければ手元に入ってくるお金は増えます。

そのため自費出版の出版社選びにあたり「高い印税率で契約できる出版社であることを」を重視する方もいます。 しかし印税率の高さだけで出版社を選ぶのは、やめたほうがよいでしょう。 印税率が高くても、販促・流通が弱くて本が売れなければ、印税は入ってこないからです。また編集サポートが弱ければ、満足いく本はつくれません。

電子出版についても、日本ではまだ電子書籍の市場が小さいためあまり本が売れず、期待ほどロイヤリティが得られない可能性があります。 印税率よりも「サポートが充実しているか」「満足できる本がつくれるか」などを比較項目にするのがおすすめです。

販売部数を増やすコツ

印税額を決める要素には「販売部数」もあります。販売部数を伸ばすために著者が実践できるコツを紹介します。

本のタイトルにこだわる

まず「本のタイトル」に十分こだわることをおすすめします。タイトルが売れ行きに大きく関わるからです。

例えば実用書ですと、「悩みを解決したい」「役に立つ情報を知りたい」という気持ちの読者が多いため、「自分の探している情報が得られる」ことが一瞬で理解できるタイトルが求められます。

ただし読者を惹きつける効果的なタイトルを考えるのは、思った以上に難しいものです。そのため経験豊富な編集者がいる出版社にアドバイスを求めることをおすすめします。

注目が集まりやすいタイミングで出版する

同じテーマ・タイトルの本であっても、出版のタイミングによって売れ行きが変わります。具体的には、執筆テーマに関する「法改正」「受賞」「新発見」「大きなイベント」のタイミングを狙うと、出版した本に注目が集まりやすくなります。

例えば「増税のタイミングで、お金や節約に関する本を出す」「学習指導要領改訂のタイミングで、小学生の学びに関する本を出す」といった戦略が可能でしょう。 出版のタイミングを決めておくことで、制作スケジュールも決めやすくなるはずです。

販促・流通に強い出版社を選ぶ

販促・流通に強い出版社を選ぶことも重要です。販促や流通が強い出版社を選べば、本が読者に届く確率が高まります。

「自費出版の本は、書店にはあまり置いてもらえない」といわれますが、書店との関係ができている出版社であれば、流通網を確保できます。「自費出版本をヒットに導いた実績がある」という出版社なら、書店も信頼して本を置いてくれるでしょう。

「イベントや自身のブログのみでの販売」「家族・友人に配るだけ」ではなく、本を広く流通させることを考えているなら、販促・流通に強い出版社を選びましょう。

自費出版での販売価格の決め方

印税額を左右する要素には「販売価格」もあります。

販売価格が高いほど、入ってくる印税も多くなります。 販売価格は出版社側が主導して本の価格を決めるケースが一般的。同じ仕様・ボリュームの本を参考に決めるケースが多いです。例えば新書や文庫なら、たいてい500~1,000円程度で販売されています。

印税の支払い時期

印税の支払いタイミングは、出版社により異なります。

例えば「6ヶ月ごとなど期間を区切って計算し、支払いを行う」「印税額が一定額を超えたら支払う」といったケースがあります。 いずれにしろ「本が売れたからと言って、すぐに印税がもらえるわけではない」ということは認識しておく必要があるでしょう。

印税に関する税金 印税を得た場合には、確定申告などの手続きが必要です。個人で自費出版した場合の「印税と税金」について解説します。 印税は出版社によって源泉徴収される 印税は出版社によって源泉徴収されてから、著者に支払われます。「会社員の給料から所得税が天引きされる仕組み」と同じだと考えてください。

印税にかかる所得税率は「100万円以下の部分に対して10.21%」「100万円を超える分に対しては20.42%」(2023年2月現在)です。 例えば印税が10万円だった場合は10.21%が源泉徴収されるため、実際著者に支払われる額は89,790円となります。 印税を得たら確定申告が必要 印税を得たら確定申告が必要です。仕事として執筆活動しているなら「事業所得」、副業なら「雑所得」となります。

副業の場合、給与以外の所得金額が20万円超の場合に確定申告が必要です。 なお所得とは「収入から経費を引いた額」です。収入から差し引ける経費(出版のために使った交通費や資料購入費)がある場合は、差し引いて計算します。経費が多い場合、確定申告で還付金を受け取れる可能性があります。

自費出版には印税・売り上げ以外のメリットもある

自費出版で印税が入らなかったとしても、自費出版には印税以外のメリットがあります。 具体的には「自己実現」「家族が喜ぶ」といった達成感・満足感のほか、ビジネスや収入の面でも以下のような効果が期待できます。

  1. 本が販促ツールの役割を果たし、本業の新規顧客や売り上げが増える
  2. 専門知識を見込まれ、個人あてに「講師」「コンサルタント」などの依頼が入る
  3. 雑誌などへの寄稿を依頼される
  4. 商業出版デビューにつながる
  5. 本を書いたことが就職
  6. 転職活動で有利になる

印税というかたちではなくても、「収入の増加」「次回作の出版」につながる可能性があります。つまり「自費出版は投資やセルフブランディングになる」といえるでしょう。

もちろん自費出版を収入増やセルフブランディングのツールとして活用するなら、装丁も中身も次回作や収入につなげるだけのクオリティに仕上げる必要があります。満足できるクオリティに仕上げるためには著者自身が原稿の質をあげるのはもちろん、編集・印刷製本面での出版社のサポートも重要です。

まとめ

自費出版で印税が発生するケースは多くありません。 出版社判断で発行部数が増えたり重版・増版されたりするケースでは印税が発生しますが、自費出版では印税などの「目先の利益」のみを重視するのではなく、「たくさんの人に本の内容や著者(自分自身)について知ってもらう」ことに力を入れるのがおすすめです。

本の内容やあなた自身をたくさんの人に知ってもらうことで、「講演依頼」「集客力アップ」など、印税とは違うかたちでの収入につながる可能性があります。 自費出版をセルフブランディングにつなげるためには、まず本を納得できるクオリティに仕上げる必要があります。「自費出版をセルフブランディングにつなげたい」という方は、本づくりから流通までトータルでサポートできる幻冬舎ルネッサンスにご相談ください。

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