座右の一冊
竜馬がゆく
司馬遼太郎著ここが魅力学生時代に常に「竜馬ならどうする?」と問いかけて行動していた時期があります。次第に私は竜馬ではないし、この作品に描かれている竜馬は、司馬遼太郎という類まれな勤勉な作家が、『夜露が結露するかのごとく』して結実させた作品の一部であることに気付かされました。しかし竜馬は、強く男らしくおちゃめで自由奔放な日本的国際人として、私の永遠の理想像です。
後世への最大遺物
内村鑑三著ここが魅力財産をなす人もあれば、様々な作品を残す人もあれば、教授になる人もあれば、大臣になる人もあるが、それらは様々な因果や運というものにも左右される面もあり、必ずしもかような人々が人類に等しく貢献しているとは限らない。結局「後世への最大遺物」はあなたの生き方そのものである、という結論だったかと思いますが、何かの障壁にぶち当たった際にこの言葉が思い出され、結果に囚われず立ち向かっていこうと勇気付けられたことが何度かあります。
阿寒に果つ
渡辺淳一著ここが魅力医師である渡辺淳一氏は、腕の立つ大学の整形外科医で将来を嘱望されていながら、その地位を完全に放棄して物書きに転身された方です。同作品は、阿寒湖が望める山の峠で美しく死んでいった少女を実話に基づいて描いた初期の作品ですが、自身もそのように雪山に足を踏み入れて、自ら命を絶とうかなと思ったことが若かりし頃に2回ほどあります。この主人公の死に顔を思い浮かべると、死は怖いものとは微塵も感じられず、むしろそのような安らかな死を受け入れつつ、美しく生を全うすることに価値を見出したがゆえに、今ここに存在しているとも言えます。