──のぶみさんの作品を見ると、大人気の「しんかんくん」シリーズはこどもに人気の「新幹線」をキャラクター化されていますが、ほかには「ぼく」という一般的なこどもを主人公にされていることが多いようにお見受けします。
のぶみ:もちろん、だからといって、こどもに「人気のもの」をひたすら追求すればいいというわけではないんですよ。絵本には、オリジナリティが求められます。「魅力ある主人公=キャラクター」とは、よい絵本の重要な要素ですが、世代を超えて愛されているキャラクターを見てみると、非常によく考えられていることがわかります。
たとえばアンパンマンには、「たべもの」や「ヒーロー」、「愛」、「勇気」、「勧善懲悪」など、いろんな要素が込められています。絵本ではないですが、ドラえもんであれば、「ネコ」、「ロボット」、「未来=SF」、「道具」などの要素が挙げられるでしょう。どんな要素を込めていくか、そこに作家のオリジナリティが現れるんだと思います。
じっさいに絵本を買うのは、だいたいがお母さんで、書店でさっと立ち読みして、買うか買わないかをぱっと決めることになります。こどもを連れて書店に行くことも多いでしょうから、絵本の内容をじっくり読む時間はありません。ですからぼくは、タイトルと表紙の絵にはとてもこだわっています。
簡単に言えば、タイトルに「でんしゃ」という言葉があれば、電車が好きな子のお母さんは、きっと手にとってくれますよね。女の子をもつお母さんであれば、「おひめさま」というワードが刺さるかもしれません。でも、先ほどの「どうぶつ絵本」の話だと、タイトルに「オオサンショウウオ」や「マングース」とあってもどうでしょうか。(笑)たとえよい話であったとしても、手にとってもらえるチャンスは確実に少なくなります。だからぼくは、タイトルと表紙の絵をぱっと読んで、「この本なら買いたい!」と思ってもらえるような絵本を目指しています。
ここで難しいのは、こどもが「おもしろい!」と思う絵本を、お母さんが買うとはかぎらないところです。お母さんがたに「どんな絵本がほしいですか」と聞くと、必ずと言っていいほど「しつけ絵本」と答えるんですよ。世の中のお母さんが、いかに育児を頑張っているか、苦労されているかが見えるような気がします。たしかに、絵本を通じてこどもが「よいこと」と「悪いこと」を自然に学んで、成長してくれたら、いいですよね。