エントリーナンバー2さみしさ鬼
p6著者名:天野 秀作
どこかで鼻をすする音がした。ふと横を見ると、母がいた。枕元に座って、僕を見ていた。そして母の瞳は涙に濡れていた。僕を見ながら泣いていたようだ。
「お母ちゃん」
「ごめん、起こしてしもたね」
「どないしたん?」
「ううん、何でもない。ちょっと坊の顔見たくなっただけや。心配せんと寝ぇ」
「うんわかった」
僕は再び眠りに落ちた。するとまたコロちゃんが僕の傍にやって来て僕に話しかけた。
「ご主人、お母様には会えましたか?」
「うん。でもな、お母ちゃん、泣いてた」
「それでご主人はどう思いましたか?」
「え、どおって……」
「悲しいと思いましたか?」
「うん、ちょっと悲しかったけど……」
「けど?」
「でも、僕がお母ちゃん、鬼から守ったるねんて思った」
「やっつけましたね」
「え?」
「淋しさ鬼」