──デビューの少し前に小説教室に入られましたが、そのきっかけは何だったんでしょう。
七尾:きっかけは『このミステリーがすごい!』大賞に落選したからですね。「ホラー・サスペンス大賞」も「このミス」大賞もダメだったので、どうしたらいいのかわからなくなって、誰かのアドバイスをもらいたかった。当時は自費出版というものを知らなかったので、小説教室に通うことにしたんです。
──デビュー前にこれがあればよかった、といったものはありますか。
七尾:そうですね。デビュー前は、連載や絶対に落とせない締め切りがあるわけではないので、書きたい時に書いていました。とはいえデビューをしたければ、書かなければならない。それに対する強迫観念のようなものはありましたね。けれども書けなかったんです。なぜかというと、今は編集者さんがいて、はっぱをかけてもらえますが、当時は自分を律して書くしかなかった。そういう環境だとだらけちゃう人のほうが多いと思います。担当編集者がついて、アドバイスをしてくれると書く気も起こると思いますが。
──アドバイス、ですか。
七尾:はい。誰かしらアドバイザーやスーパーバイザーのような人がつくと最後まできちんと書けるようになるんじゃないかなぁ。例えば小説教室とか書き方教室みたいなもの、それに自費出版で担当者がつくとか。そういうのがまったくないとなかなか継続的、持続的に書くのは難しいと思います。現実問題として、普通は読んでくれる人もいないですしね。担当編集者さんがいれば、必ず読んでくれますから。友人や家族ではダメですね。重要ではないようなところを褒めてくれるか貶してくれるかのどちらかですから。作家になりたいけれど世に出ていない人のなかには、才能のある人がたくさんいると思うんですよ。
──七尾さん自身は、デビュー後に担当がついて、どのような利点がありましたか。
七尾:やはり編集者はプロですから。例えば素人が東京を舞台にするよりフランスを舞台にした方がおしゃれなんじゃないか、とパリを舞台に物語を書いたとします。すると、編集の方から「東京でも成り立つ話なのに、なぜパリでなくてはならないのか」と問われたりするんです。こちらは別にパリでもいいじゃないかと思ったりするんですが、東京のほうがなじみがあるから読者受けがいい、といわれました。それは確かにそうで、編集者は商業として売れるかどうかということも視野に入っているんですが、アマチュアだとそれに気がつかない。ほかの人の意見が入らないと、作品はいつまでたっても独りよがりなんですよ。でも、誰かがアドバイスしてくれると、その独りよがりから抜けることができる。それがプロデビューへのステップ、きっかけになるんじゃないかな、と思います。