表現者の肖像 柴田和夫
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人生を変えた出会い

大学4年の時、外務省の上級職の試験にトライしましたが不合格となり、外交官への道は諦めて外国勤務のある商社への就職を希望し、「鶏頭となるも牛後となるなかれ」の諺に倣い、当時、商社の番付では10位より少し下の商社を選択し、大阪本社で働くこととなりました。

しかしながら、大阪には知人もおらず、入社後最初の仕事も、貿易の仕事とは全く関係のない国内の財務関係の仕事でした。
この仕事は、自分には全く合わないと思いながらも、我慢に我慢を重ねた日々を送っておりました。
しかし、そのような時に、私の部署に、眼鏡をかけ、小柄であるがやたらに声が大きく、人懐っこい笑顔をした藤井さんという御仁が配属となってきました。
ユウモア精神に富んだ藤井さんは、直ぐに部内の人気者になり、下っ端の私も大変可愛がっていただき、仕事終了後は、よく飲みに連れていっていただきました。

藤井さんは、当時、商社に残るべきか悩んでいた私をすぐ見抜き、本当に進みたい道があるのであれば、その道に進むべきではないかと助言してくれたこともありました。
藤井さんが私の背中をそーっと押してくれなければ、商社を退職することも、その後の外交官人生もなかったのではないかと思われます。
藤井さんのアドバイスも手伝ってか、丁度2年間の勤務後、きっぱりと商社をやめ、外務省受験を決意しました。
残念ながら、翌年の上級職試験には不合格となりましたが、専門職試験には合格し、外務省に採用していただいた経緯があります。

他方、藤井さんご自身も思うところがあった由で、その後、商社を退職し、故郷の福井に戻ったことがありました。
在外語学研修に出る直前、福井にお邪魔し、旧交をあたためたことがありましたが、藤井さん自身も清々しい気持ちで新しい仕事に就いたことを知り、私も大変嬉しくなったことを覚えております。

幻冬舎ルネッサンス新社

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